哲学する子どもたちーバカロレアの国フランスの教育事情

 翻訳家の著者は日本人であり、フランス人の旦那を持ち、フランス在住である。その子どもはフランスの学校に通っており、そこから見えてくるフランスの教育事情の紹介である。

 まず、フランスといえば、哲学。哲学の授業がある。哲学では、用語の定義、論理と論理を対立させて昇華させる。さすがフランス。思考するフランスである。

 一方で、フランスの学生生活はやや味気ない。修学旅行もなければ、入学式もない。部活動もない。個人の生活があり、集団の生活が必ずしも強制されていない。友人と遊んだり、家族と過ごしたり、そのような時間が大切にされているのかもしれない。しかし、フランスの学生はよく勉強するらしい。さきほどの哲学の授業や、哲人が口頭試問であることなどを踏まえれば、そりゃ難しいであろう。特に、入学試験がなく、在学中の成績で高校や大学に振り分けられることを考えれば、そりゃまじめに勉強するもんだろう。

 フランスは独特の制度がたくさんある。まず、成績を付ける会議に保護者や生徒が出席して意見を述べる。権利保障でもあるのだろう。おもしろいのはそこで議論になって教師の意見が覆るところだ。また、クラスで問題が生じたときに対処する調停係までいるらしい。そういえば、映画でフランスの授業を見たとき、あるテーマについて、クラスで討議をさせており、その議論の勝ち負けもでていてすごいな、と感じた。議論の国、フランスである。

 フランスでは教師の権利が認められている。産休で休んだ場合、数か月代替が来ないこともあるが、そうだとしても他の先生は代わりに教えない。代わりの先生も大変だからである。保護者もその点について特に文句を言わない。しわ寄せが来るのは子どもだが。まぁいいのかもしれない。というか勉強なんて自分でできるんだし。自習時間もよい時間だと思う。

 

 なんという自由さ。そして他人を責めない。いいねえ。