ニッポン宇宙開発秘史(☆☆☆★★)

 日本の宇宙開発を概観した新書です。日本がお金のない中、いかに宇宙開発に取り組んできたかを教えてくれます。

 

 日本は、第二次大戦で負けたことにより、飛行機の研究を禁止されました。そこで、宇宙開発をできなくなったんです。しかし、飛行機の翼と音響の関係から、音響学を大学でしていたらしいです。その後、アメリカで宇宙に触れる中で、ロケット開発を志しました。それは、戦後の日本で若者が自信を失っている今だからこそ、若者を奮い立たせようとしたそうです。

 

 糸川先生の素晴らしさもまた面白い。糸川先生は小さい頃あまり勉強しなかったみたいです。でも、母親から友達に教えるには勉強しないと、と言われると勉強したそうです。優しいですね。

 

また、科学についても素晴らしさと恐ろしさを感じました。ドイツの科学者ヴェルナー・フォン・ヴラウンは、ヒトラー政権下でロケットを開発しました。彼は、戦争に協力することについて尋ねられた際、当時は月や火星にいくことしか考えていませんでした。月や火星にいくためだったら、私は悪魔とでも手を握ったはずです。と答えました。いかに知的好奇心がすごいかを表す言葉だと思います。

 そして、面白いのは、文学の与えた科学発展への寄与です。アメリカやソ連のロケット開発の第一人者は「月世界旅行」を愛読していました。文学の想像力が宇宙に人間を導いたとも思えます。知的好奇心に加えて、物語もまた強い力を持つのだと思います。

 

 過去、国際協力の象徴はなんだったでしょうか。それは、オリンピックです。古代ギリシアでは、戦争をしていても、5日間のオリンピックのために3ヶ月は休戦したそうです。しかし、現代の私たちにはそのような聖域はありません。オリンピックも、政治利用され、ボイコットもあります。しかし、宇宙の国際協力は違います。ウクライナ危機が起きたときでも、ISSの中での宇宙飛行士同士は、国籍を超えて結束したそうです。

 そうすると、宇宙開発は、最高の国際協力の場なのかもしれません。