【感想】男が痴漢になる理由☆☆☆☆

 なんで痴漢をするんだろう。そして、どうしたら痴漢を止められるようになるんだろう。そんなことを考えながら手に取った本です。

 そもそも、痴漢は日本で多くされる犯罪(海外ではChikanと呼ばれる。)であるにもかかわらず、日本で研究が進んでいないのです。

【内容】

 性犯罪は暗数があることが有名です。見つかっていないけど、実はたくさんあると。アメリカの研究によると、一人の性犯罪者が生涯380人の被害者を産むと言います。

 性加害者は、どのような人か。強姦や強制わいせつの加害者は、無職が2、3割と通常の犯罪者と異なり、また、既婚者が半数以上を示しています。データをまとめると、痴漢の加害者は、四大卒の勤め人、既婚男性が典型イメージになります。

  痴漢加害者が初めて痴漢をする平均年齢は33歳、初めて逮捕されるのは平均41歳である。

 痴漢加害者でボッキしている3割、していない人5割、どちらもある人2割である。結婚し、夫婦生活がある人の中でも痴漢をする人がおり、必ずしも性よく解消が目的とされているわけではない。

 では何が原因か。それは、支配欲、男性性を強調することは自己コントロール感を強めるのでしょう。ゲーム感覚やスリルなどもあるでしょう。

 ではどのように解決すべきか。痴漢の前後では、マスターベーションの回数が増えます。性欲と他の支配感などの感覚、ストレスは結びつきます。そこで、マスターベーションを手放す、回数を制限して管理をすることが一つの方法です。制限すると、意外と我慢できる人がいるようです。

 また、インターネットの掲示板で相互に評価し合うことで、痴漢が強化されることがあるため、見ないことも重要です。

 海外では、未成年に対する性犯罪者に対して、インターネットの利用を制限することが可能となりました。

 痴漢犯罪者が犯罪を辞めるきっかけとして多いのが、逮捕です。しかし、逮捕されても起訴されないことが多く、甘く受け止めてしまうことにも繋がりうるものです。

 平成27年度の犯罪白書によれば、痴漢の1回目の再犯率(約17%)は、強姦とほとんど変わりませんが、2回目の再犯は、単純強姦で数%であるが、痴漢は24.8%、3回目の単純強姦の再犯は0.8%で、痴漢は42.7%となっており、再犯率が際立って高い。

 著者は、裁判に証人として呼ばれ、再犯防止プログラムの説明やその効果を説明するそうですが、あまり司法の業界に再犯防止プログラムは知れ渡っていないようです。また、寒々しい謝罪文が読まれているとの感想でした。

 

【感想】

 さて、逮捕が再犯防止において重要なきっかけになっているとのことですが、司法、すなわち法曹三者はこれに真剣に取り組んできたのでしょうか。

 司法修習中、弁護修習、刑事裁判、検察をめぐることになります。

 しかし、弁護では、被疑者に黙秘権など弁護上必要な話をするにとどまり、再犯について真剣に被疑者と話さない弁護士が少なくありません。また、検察も、被疑者に説教をするだけであり、被疑者のどこに問題があるかわかっていないまま、強く指導するにとどまっています。指導することで犯罪がなくなればいいですが、そんなことはあり得ません。裁判所も事実認定や手続進行が重要であり、法廷を再犯防止の場にふさわしい状況にしようとしていません。

 法曹三者は、刑事裁判において、事実認定や刑事手続については詳しいが、犯罪については無知、なのだと思います。そして、それを恥ずかしいと思ってさえいないことに非常に驚きを感じました。

 この無知は、同時に弁護士の力量不足も感じます。弁護士が被疑者に不利なことをきちんと話せる対人折衝能力を欠いているところがあると思います。また、検察官は再犯防止に取り組んでいるという看板を掲げつつ、実際何もできていないのかもしれません。

 法曹三者がまず犯罪というものを知る。まずはそこから始めるべきなのだと思います。