【感想】文系大学教育は仕事の役に立つのか  

 

 心惹かれるタイトルである。理系と比べて職業に直結せず、文系教育は意味がないと言われ、企業からはコミュニケーションの能力が欲しいと言われる昨今、文系教育は役に立っているのか。以前、大学院の小論文で、親戚から文系の大学院なんか仕事の役に立たない場所に行って何の役に立つのかと言われたときに、どのように反論するかが問われたことがあった。文系教育は世間から役に立たないと言われていると大学院も危機感を持っているのだろう。

 

【内容】

 

 理論に加えて、実社会とのつながりを意識した教育を行うこと、チームを組んで特定の課題に取り組む経験をさせることに対して、企業から大学への期待が高い。一方で、大学は、専門分野の知識を学生にしっかり身につけさせること、専門分野に関連する他の分野の基礎知識を身につけさせることに比重があり、大学と企業にはギャップがある。

 

 研究では、採用担当者が大学時代に意欲的に取り組んでいなかった場合、大学教育が役に立つとは考えなくなる傾向が見出された。

 

 人文科学系でも差があり、教育学部がもっとも大学教育が仕事に役立つと捉えている。その根拠としては、教育が仕事に役立つことを意識してなされていること、                                        教育の双方向性が高いことである。また、ゼミの密度の高さも将来の判断スキルや交渉スキルの高さにつながっている。   

 

 在学中の就業体験と学習内容との関連が高いほど、職場での大学知識の活用度が高く、インターンシップのような就業体験だけでなく、広く学習と関連する体験を持つことが重要である。  

 

 資格を取得するのは、学歴が低い大学の学生が学歴をカバーするために取得するのではなく、学歴の高い人ほど資格を取得していた。

 

 そもそも真面目に授業に取り組んでいない人ほど大学時代の勉強を役に立たないと思っている。

 

【感想】

 

 法学部では、将来の進路が様々であるし、そもそもゼミも必要的ではなく、授業は淡々と法理論を進めていく。そうすると、法学部は、潰しが効くわりに、仕事に役に立っている感覚は鈍いのだと思う。他方、法科大学院は、司法試験という明確な将来に向けた教育であり、ソクラテスメソッドという双方向性、学生が自主ゼミを組むなどの密度の高い勉強を考えると、満足度は高いと思える。しかし、法科大学院で学んで良かったという話を聞くことは少ない。なぜか。非常に疑問である。そもそも、司法試験という明確な将来に向けた勉強になっていないのだろう。そもそも教職と比べて、試験が難しすぎて、試験合格後に必要なスキルを学ぶという意識も育ちづらい。ソクラテスメソッドも、教授によっては、単なる吊し上げに終わり、双方向に議論をして理解を深めるという形にはなりにくいのだろう。そう考えると、法科大学院の授業は、かなり絶望的な気配を感じる。

 もっと試験に直結した授業、もっとも双方向性を高めて学生の理解が深まる授業にしていかないと、無用の長物になりそうで怖い。

 また、大学でもっとも学ばなければならないのは、自ら勉強をしていく姿勢なのだと感じた。それだけあれば、あとは自分で勉強して何とかなる。そういった姿勢を学ばせる、学ぶことに意義を見いだせる授業が増えればいいと思う。しかし、法律に関連する指導者は、指導の仕方が下手だと思うが、これいかに。