幕が上がる(小説)平田オリザ

青春だねぇ、これがまず感想です。

演劇部を舞台にした青春小説です。

作者の平田オリザ先生の授業をとっていたこともあり、読んでみました。

 

顧問の先生が変わるだけで部活は変わるのはやはり部活物語としてはありがちですが、青春物語の見どころはやはり青年がどのように大人になっていくかでしょうか。

 

「大人になるちうことは、人生の様々な不条理を、どうにかして受け入れる覚悟をするということです。」と文章中にある。こう聞くと、ネガティブなイメージを抱きがちだけど、決してネガティブではない。これからの人生をポジティブに生きるためにも大事なことだと教えてくれる。これから、不安も恐れも期待も同じくらいあるけれど、その先には光が道満ち満ちている。そこを歩いていくためにもその覚悟が必要だということを教えてくれる。

 

主人公の高橋さおりは、部活の顧問吉岡先生に裏切られる。

部活動の大会目前、吉岡先生は、自身が女優として活躍したいがために部活を辞めることになった。事情も考えると、やむを得ないことでもあるのだろう。でも、これはおそらく明白な裏切り行為だろうと思う。でも、主人公は、それに傷つくことはあっても裏切りとは認めなかったのだ。

それを裏切りと思わなかったのは、主人公自身も芸能の道を歩み続けていたからであろう。

 

人生は傷つきながらも、光にみちみちていることを教えてくれる、素晴らしい小説だった。