【感想】壁の男

壁の男、貫井徳郎著者。

 

 たいしてうまくない絵を家の壁に描き続ける男。次第に町中の人が書いて欲しいと頼み始め、町は、絵で有名になっていく。しかし、なぜ彼は絵を描き続けたのだろうか。

 

 ミステリー、と言われればミステリーなのだと思うけれど、どちらかというと心温まる感じがする。悲しい部分もたくさんあるんだけれど、読後にはそこまで残らない。ああ、そうだったのか、と心温かく納得してしまう。

 これから先、大人になればなるほど、才能(努力?)の差は明らかになっていく。それは決して生まれた時からのギフトではないのであって、積み重ねのはずなんだけれど、才能の差を感じざるを得ない時がある。本当は、人と人との間を隔てるものはないはずなのに、才能に対する劣等感が邪魔をする。劣等感を感じるなら頑張ればいいのだろうけれど、頑張るほどの気力を失った年齢になった時、私たちはどのようにすれば良いのだろうか。若いときに気づければうまくいくかもしれない。でも、年取ってその差に絶望したら。