トラペジウム(高山一実)

 乃木坂46の高山一実さんが書かれた小説。個人的に乃木坂46が好きだったため購入しました。アイドルが書いたということで、内容より著者で有名な部分はあったかと思いますが、小説としてとても面白いものでした(以下ネタバレ含む)。

 

 主人公は、アイドルに憧れる女の子。オーディションに受けても合格できずない中で、アイドルになるために友人を集めて世間の注目を浴び、アイドルになろうとするストーリー。

 

 「この子たちもみんななりたがっているの?アイドルに。」

 

 「アイドルになりたくない女の子なんているんですか?」

 

 「そりゃたくさんいるだろう。」

 

 「みんな言わないだけで、心のどこかでは夢見ているんじゃないかって私は思います。」

 

 アイドルってみんなが憧れるものなんだろうか?人の前に立って、可愛くて、踊れて、歌えて、そんな仕事に憧れないわけがない、そんな風に思えてしまうまだ若い主人公。そこから歯車が壊れ出す。必ずしもみんながなりたいわけではない。でも、自分が憧れてやまない仕事、なりたくない人なんていない、そんな傲慢で、美しい思いが友人を苦しめる。

 

 「もう嫌だ嫌だ。テレビに出たくない。自分を知られたくない。人から見られたくない。」

 

 「説得しなきゃ。くるみちゃんを。」

 

 …………………

 

 「普通の女の子に戻してあげましょう。くるみさんは元々目立ったり表に立つことが苦手な子だったじゃない。東さんならわかるはずよ。」

 

 「せっかくここまで来たのに辞めるっていうの?」

 

 …………………

 

 「綺麗な服を着て、可愛い髪型をして、スタジオで沢山の光を浴びて、それがどれだけ幸せなことか…」

 

 「それを楽しいって思えるのは、東さんがアイドルを好きだからよ。」

 

 「そんなことない!慣れていけばきっと楽しくもなっていく。アイドルって大勢の人たちを笑顔にできるんだよ?こんな素敵な職業ない!」

 

 「…ち…近くの…」

 

 「近くの人を…笑顔にできない人が?」

 

 とうとう友人の一人がアイドルからドロップアウトをしていく。それでも、アイドルになりたくないわけがない、そう思う主人公は暴走していく。

 

 …………………

 

 「私はね、東ちゃんのファン1号だったんだよ。」

 

 友人たちが潰れ、アイドルから離れていく。主人公は一人気持ちの置き場を失っていく。そんな中で、一緒に活動していた友人からファンだったと打ち明けられる。

 

 誰もが、誰かのアイドルで、誰かのファンなのかもしれない。確かに、自分にもアイドルのように、憧れてやまない人がいる。アイドルを見て、頑張れることもある。でも、一緒に働いていた先輩とか、上司とか、同僚とか、身近な人から力をもらっている。

 

 そして、自分も誰かにとってのそんな人なのかもしれない。アイドルというのは何も特別なわけではない。誰から力を、笑顔をもらえるかは偶然だ。たまたまの縁だと思う。職場で出会う誰かかもしれない。働くことがしんどく、家にいることが多くて、そこでたまたま見かけたアイドルかもしれない。いろんなところで、いろんな人から力をもらっている。願わくば、自分もそんな人であれますように、そう思う。

 

 以下余談。 

 

 がむしゃらに目出す人が好きです。履歴書を何通から出したけど落ちた、だから諦める。いや、それだったら100通出せばいいじゃない。正規のルートでなれない、だったら別のルートを作ればいいじゃない。芸人なったからアナウンサーになれた人もいるよ。なりたいなら、全力で努力すれば、道は開ける。

 

 アイドルって大変だと思う。役者は、演じた役が評価される。アイドルは、生身の自分が評価される。演じた自分を愛してもらえることもできると思うけど、どこかで自分が何者かわからなくなるんじゃないだろうか。だからありのままの自分が見られる。それを評価されたら嬉しいけど、評価されなかったら自分の全てがダメだと思うのかもしれない。それってつらいね。だから、アイドルってすごいと思う。

 

 アイドルの人が書いた本だけど、誰もがアイドル、、、というようなイメージの本だった。びっくり。でもアイドルの人が描いたからこそ面白いないよだったと思う。とても良い作品でした!

 

 かずみん綺麗になったなぁ。